箸はともかく棒にはひっかかりたい

とある大学教員によるいろいろなメモ書き

ファーストエイドキットを再考する ※追記あり

この記事は、主に陸地でのフィールドワーク、および登山をすることを目的とした「ファーストエイドキット」の中身について、元山岳部の筆者が考えたものです。もし「こんなものもオススメですよ!」という所持品等があれば、お知らせいただけたら幸いです。

ファーストエイド:応急手当の心得

怪我をしてしまった時、事故に遭ってしまった時。当事者の回復に直接的に貢献するのは「迅速な応急手当」にあると考えられます。実際に「応急手当」には、以下の3つの目的があると言われています。

救命:けが人や急病人の生命を救うこと
悪化防止:けがや病気を今以上に悪化させないこと
苦痛の軽減:心身ともに受けたダメージを軽減させるようはたらきかけること

自然の中に出かけて、無事に帰ってくるためには、ひょっとしたら訪れてしまうかもしれない「いざ」という時のことを想定し、限られた積載量の中で、できるだけかさばらず、なおかつあらゆる状況に対応できるようなものを、備え、持っていく必要があると考えられます。

 

では、実際に何を持っていけばいいのか?というとそれが意外と難しく、市販で売られている「ファーストエイドキット」は最低限のものしか入っておらず、具体的な緊急事態に備えるには不十分である、ということが多いです。

そこで、筆者がフィールドワークおよび登山に持参することを想定した時に作成した「ファーストエイドキット」の中身について紹介します。これから夏山シーズンが始まりますが、無事に登って帰ってくるためにも、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。

 

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外傷対策

ミネラルウォーター

飲用ではない水として持参されたい。特に、傷口を清潔な水で洗浄するために重要である。

消毒液

いろんな種類があるが、基本的にはどれでもOK。ただし、エタノールオキシドール等の強い薬品は、傷口周辺の細胞をも傷付けてしまうため、注意が必要。

抗生物質入り軟膏

軟膏の抗生物質。薬局等で購入可能。怪我をした際に、異物を取り除き、血液をある程度洗い流した後、後述する「滅菌ガーゼ」を用いて直接圧迫止血をし、軟膏を塗っておくと、細菌による感染を防げる。

抗菌目薬

目に異物(特に虫や枝、砂等)が入った時や、目にキズがついてしまった際に有効。基本的に、目薬の使い回しは御法度であるため、このような使い切りのものをいくつか入れておくと、同行するメンバーの誰かが困った時にも使用しやすい。

滅菌ガーゼ

個包装になっており、開封されるまで清潔な状態に保たれているのが特徴。主に傷を保護したり、体液を吸収したりするために用いる。野外においては、雑菌や病原菌が傷口へ侵入することを防ぐのが極めて重要であるため、傷口に直接触れる処置をする場合はに必須である。

滅菌綿棒

こちらも傷の処置等に用いる。例えば、傷口に「目に見える異物」が存在する時などに、取り除く等の使い道が想定される。繰り返すが、滅菌済みで、個包装になっていることが重要。

防水フィルム

処置後の患部を水に濡らしたくない時に用いる。こちらはロールタイプのものだが、滅菌ガーゼのサイズに合わせてカットして持っていくと使いやすい。

普通のガーゼ

滅菌ガーゼを使うほどでもないが、何かぬぐいたい時などに有用である。

 

処置後の固定・運動補助

三角巾

主に骨折等の疑いがある時に、添え木を固定する目的で使われることが多い。「大きな布」は、汎用性が高く何かと便利であるため、1枚は携帯しておくと良いだろう。

包帯

伸縮性と非伸縮性がある。伸縮性は可動域をある程度維持するために有効であり、非伸縮性はどちらかというと固定する際によく用いられる。下に示すリンク先のものは伸縮性であるが、包帯と、後述する「テーピング」で、機能を分けて持っていくと良いだろう。

また、怪我をする部位や留め方によって、それなりの長さが必要になることがあるため、積載量に余裕があれば2巻ほど持参すると安心できる。

テーピング

伸縮性と非伸縮性がある。下に示すリンク先のものは非伸縮性である。

フィールドでの行動を続けるにあたって、テーピングは運動補助のために大いに活躍する。骨にしろ筋肉にしろ、出発前から身体のどこかに不安がある人は必ず持参されたい。また、出発前に自分のためにある程度の巻き方を習得してから向かうとよいだろう。

 

虫対策

ポイズンリムーバー

ハチなどの虫に刺されてしまったとき、その毒を吸引するための道具である(繰り返し利用できるらしい)。フィールドでは、刺されてしまってから病院に行くまでに長く時間がかかるため、持っておいた方がよいだろう。

ダニ取りシート

マダニが多い地域に行く場合には必要と思われる。このシートを使えば、身体に噛みついたダニを、アゴすら残さず綺麗に取り除けるらしい(筆者は未だ体験していないのでわからない)。

しかしながら、ダニを媒介する病気は複数あり危険性も高いため、このシートによってそのリスクが減らせるならば持っておいた方がよいだろう。

虫除け

植物から抽出された匂い物質には、モノによっては虫に対する強い忌避効果がある。ハッカ油は虫(特にマダニ)によく効くらしいが、肌が弱い人は注意が必要かも知れない。

 

その他:筆者オススメ必携グッズ

鎮痛薬

大きな怪我(深い傷を負う、骨が折れる、歯が欠ける、など・・・)をした時に、鎮痛薬を服用するかどうかで、外傷者が安全な場所まで移動する際の負担が大きく変わる。

キズパワーパッド(大きめサイズ・ワイドサイズ)

事前に使用方法をよく読んでおく必要があるが、大きめの傷ができてしまった際に貼ると傷口が安定しやすい。サイズに種類があるため、複数購入しサイズ違いでいくつか持参する(あるいは、大きいもののみを用意し、その時に必要なサイズにカットして使う)とよいだろう。ただし、これを用いるとしても、止血は必須である。

キズパワーパッド(靴擦れ用)

フィールドに履き慣れた靴で来ることは必須だが、歩くルートによっては足への負荷が加わり、靴擦れを起こすことはよくある。靴擦れはアクティビティを著しく落とすため、あらかじめテーピングして予防するか、このようなものを持参することが推奨される。

毛抜き

毛を抜くためではなく、刺さった棘や針を抜くために用いる。市販のキットに入っているような安価なものは、はさむ部分がうまくかみ合っていない(毛を抜くには足りるが、針を抜くには不十分である)ことが多いため、きちんとしたものをキットに入れておくことが推奨される。

爪切り

日常生活に比べて指先に力が加わる機会が多くなるため(例えば、何かを掴む・摘まむにしろ、足を踏ん張るにしろ)、爪が割れてしまったり、巻き爪が悪化してしまったりなど、フィールドにおける爪トラブルの頻度はかなり高くなる(※個人的な経験)。これらに対処するためにも、爪切りは大いに活躍する。小型のものを1つ入れておくことをオススメする。

ハサミ

上記のような対応をする時に、何かと使えるのがハサミである。こちらも安価すぎるものは切れ味が悪く、いざというときに機能を果たさないことがあるため、そのようなことがないようにきちんとしたものを持参されたい。

 

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以上が、筆者とその同僚の「実際の体験」に基づいて考えた理想的なファーストエイドキットの中身でした。これらの道具は、実際に事故・怪我の処置等をする時に大いに役立ってきたものですので、有用性は筆者たちが保証します。

また、これらは災害時等に用いる「非常用持ち出し袋」の中の携行品としても互換性が高いため、まだ準備していない方はこれを機に作成してみてはいかがでしょうか。

 

また、冒頭でも申し上げましたが、もし「こんなものもオススメですよ!」という所持品等がございましたら、お知らせいただけたら幸いです。適宜判断し、このリストに追加させていただけたらと思います。どうぞよろしくお願いします。

 

おすすめグッズ紹介

この記事を読んでくださった方から、更に「あると便利なもの」情報を頂戴いたしましたので、追記いたします(最終更新日:2022年7月6日)!

100均のプラダンシート

著者は知らなかったのですが、プラダンシートとは

  • ダンボールと同様の構造を持つポリプロピレン製樹脂から成る中空シート
  • 軽いうえに、水や油、熱に強く、丈夫で長持ちする

もののようです。主な使い道としては、骨折した場合の支えにできたり、ガスコンロの下に敷いて安定・安全性を確保したり、調査中に壊れやすい標本を保護するために箱を作ったりなどが挙げられるようです。板状のシートなので、ザックの背中側などに1枚忍ばせておくと、場所を取ることもなく(しかもそんなに重くない!)良いのかも知れませんね。100均ものである理由は「躊躇無く色んな使い方ができるから」とのことです。

私も今度買って試してみようと思います!

 

備えあれば憂いなし!